[公開大捜索]記憶喪失女性の身元判明で親の介護について考えた

昨夜、TBSの『緊急!公開大捜索』を観ていました。未解決事件の犯人や失踪者の情報を視聴者に募る、生放送のテレビ番組です。

 

そこに、白井優さん(仮名/推定63歳)という記憶喪失で身元不明の女性が登場し、生放送中にかかってきた実の姉からの電話によって無事に素性が判明しました。良かった良かった一見落着だね。と言いたいところなのですが、彼女には一緒に暮らしている息子がいたことから「介護放棄なのでは?」と、ツイッターで息子への批判が集中したのです。

 

 

白井優=マエダエイコさんは介護放棄されたのか?

姉の証言で、白井優さんの本名はマエダエイコさんであることはほぼ確定済み。以降、分かりやすいようにエイコさんと呼ぶことにします。

 

エイコさんは2016年7月にJR浜松駅にて記憶を失った状態で保護されました。病院で調べたところ軽い脳梗塞のあとが見られるものの、それは記憶喪失を引き起こすほどのものではないとのこと。

 

生放送中にかかってきた実姉の話で分かった事実は下記の通りです。

  • エイコさんは姫路市の病院に入院していた
  • 一生結婚するつもりはないという息子に、エイコさんの面倒をみるよう頼んでいた
  • エイコさんは息子と浜松で生活していた
  • エイコさんも息子も電話に出ず、連絡が取れなくなっていた

 

ここで、一緒に暮らしていたはずの息子はどうしているのか?という疑問が湧きます。やはり、モヤモヤを感じた人は少なくないようで「捜索願いは出されていないのか?」「介護放棄ではないのか?」と、視聴者によるツイートは盛り上がりを見せていました。

 

エイコさんは記憶喪失であり、持ち物に書かれていた名前"白井優"さんと仮名で呼ばれていたため、捜索願いは出されていてもうまく照合されなかった可能性が否めません。少ない情報で「介護放棄」と決めつけるのはいささか早計と言えます。

 

しかし、一生結婚するつもりのない息子に母親の介護を任せていたということが、私は少し気になりました。エイコさんが60代前半とすると、息子さんは30代か若しくは40代前半か。どちらにせよ、働き盛りの年代だろうと推測します。

 

仕事柄、働ける年齢の息子さんが1人で親御さんの介護を担うご家庭を見てきました。未婚の息子による介護の場合、介護離職や非正規雇用となるケースも多いです。収入源がなくなることで生活は困窮し、ともすれば共倒れになる可能性もある非常にリスクの高い選択ですが、時間的制約、体力の限界など、当事者にとってはどうしようもない理由があるのだと。

 

実の親といえども人一人の生活をみるのは並大抵のことではないのでしょう。要介護者の年金や貯蓄が少なければ、お金の不安も常につきまといます。介護をする側も、自分一人食いつなぐのがやっとという人が、世の中には大勢いるのです。エイコさんの息子さんはそういった意味での一生独り身宣言だったかもしれないし、そうではないかもしれない。

 

番組を観た限りでは、息子さんの現在について何も分かりません。分かっているのは、介護保険第2号被保険者の特定疾病(脳血管障害)に該当し、若くして要介護認定が下りる可能性がある母と2人暮らしだったこと。息子さん本人が現在音信不通であるということだけです。

 

いなくなった母を探していたのかいないのか、介護放棄なのかそうでないのか、一視聴者である私には知る由もありません。それなのに、こうしてエイコさんと息子さんの背景を想像してしまうのは、私自身が近い将来親を看る立場となるからです。

 

過去に脳梗塞を患い、現在は記憶喪失になってしまったエイコさん。これからエイコさんが自分らしく生き、幸せを取り戻せるよう願います。それと同時に、彼女が息子さんのところに戻ったとき、息子さん一人が負担を強いられるのではなく、親戚を含む周りの人や行政の支援を十分に受けられる状況であってほしい。

 

私にとっても、決して人ごとではない介護問題について今一度考える、良いきっかけとなりました。